湿度について
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日本の気候・世界の気候

建物内の湿気が原因でダニやカビなどの微生物が繁殖し、アレルギー症状や呼吸器疾患を引き起こす危険性が改めて指摘されています。このような問題を実態把握から検証している研究は日本のみでなく欧米でも積極的に進められています。いくつかの調査文献を以下に示します。

なお、この紹介は秋田県立大学 長谷川先生の調査(「住宅のDampnessが居住者の健康に及ぼす影響に関する検討」日本建築学会、環境工学委員会 熱環境運営委員会第35回熱シンポジウム、2005をもとにしています。

 冬期にインフルエンザや風邪が流行しますが、これも湿度が関係しています。

 右図はG.J.ハーパーが1961に報告したインフルエンザウィルスの空気中での生存率を報告した結果です。
相対湿度20%雰囲気での4時間後の生存率は約75%、相対湿度が30%で生存率は約60%ですが、相対湿度が50〜80%になると、生存率は数%まで激減します。
 
すなわち、インフルエンザウィルスは湿度が中〜高い雰囲気ではほとんど死滅しますが、低湿度の環境で長時間生き続けることができます。冬の空気は低湿度になりますので、ウィルスが死滅しにくくなり感染する可能性が高くなります。
 一方、人の気管支にある繊毛も乾燥によって機能低下するため、ウィルスの体内への侵入を容易にしてしまいます。

         実 態 調 査 例
名古屋市近郊のアトピー性皮膚炎患者と一般健常者の住宅を調査し、集合住宅が戸建てにくらべて高温・高湿度傾向にあって、チリダニの繁殖に適した環境に近く、反対に戸建て住宅では低湿度傾向があり、皮膚水分の低下によるアトピー性皮膚炎症状の悪化が疑われる。
東北地方の高断熱高気密住宅の調査の結果、67%が冬期に空気の乾燥を感じるが、健康障害との関連は明確でなかった。
アトピー性皮膚炎患者の住居の実測調査を行ったところ、塵量、相対湿度、結露状況が症状に影響し、塵量が最も重要であるとした。
埼玉県の3000世帯を対象にアンケート調査を行って、「アレルギー症状あり」に対して「カビの発生あり」や「室内でペット飼育あり」の影響が示された。
東北地方都市部の子供のアレルギー症状を申告している住宅ではダニ個体数が多く検出された。
東北地方都市部の健康被害を申告している全住宅において空中浮遊真菌数が多かった。またカビの発生が目視できる住宅では、より強い関係が得られた。
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